「2025年 日本の広告費」から読み解く、デジタル過半数時代にDMが注目される理由

「2025年 日本の広告費」から読み解く、デジタル過半数時代にDMが注目される理由

2026年3月、電通が発表した「2025年 日本の広告費」で日本の広告市場は大きな節目を迎えました。総広告費は8兆623億円と4年連続で過去最高を更新し、そのうちインターネット広告費が占める構成比は50.2%。調査開始以来、初めて広告費の半分以上がデジタルに投じられた年となりました。

一方で、デジタル広告への投資が拡大するほど、競争激化による単価上昇や、生活者の「広告疲れ」といった課題も顕在化しています。
こうした環境下で、あえて紙のダイレクトメール(DM)に目を向ける企業が増えています。

本記事では、「2025年 日本の広告費」のデータをもとに、広告市場全体の動きとDM市場の現在地を整理し、デジタル過半数時代にDMが再評価されている理由を読み解きます。

※関連コラム:DMの効果とは?2026年最新調査データで見る"読まれる広告"の実力

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2025年の日本の広告市場|デジタルが初の過半数に

まず、広告市場全体の動きから確認しましょう。
電通「2025年 日本の広告費」によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)。2021年から5年連続で成長し、4年連続で過去最高を更新しました。企業の好業績によるデジタル投資の加速や、大阪・関西万博をはじめとする大型イベントの開催が成長を後押ししています。
媒体別の内訳は次のとおりです。

※出典:電通「2025年 日本の広告費」より株式会社アテナ作成

最大のトピックは、インターネット広告費が初めて4兆円を超え、総広告費に占める構成比が50.2%と初の過半数に達したことです。SNS上の縦型動画など、動画広告の需要拡大が市場を押し上げました。

ただし、この「デジタル一強」の構図は、広告主にとって手放しで喜べるものではありません。出稿が集中すれば広告枠の競争は激しくなり、広告単価は上昇します。生活者側も日々大量のデジタル広告に接触しており、一つひとつのメッセージが届きにくくなっているのが実情です。

DM広告費の現在地|2,708億円という数字をどう見るか

では、DM(ダイレクトメール)の市場はどうなっているのでしょうか。
2025年のDM広告費は2,708億円(前年比94.6%)で、2024年10月の郵便料金改定の影響で発送数や媒体を見直す動きがあり、前年を下回りました。過去10年の推移を見ると、緩やかな減少傾向が続いています。

※出典:電通「2025年 日本の広告費」より株式会社アテナ作成

このように数字だけを見れば「DMは縮小している」という印象を持つかもしれません。しかし、注目すべき点が2つあります。

1つ目は、減少幅が縮小していることです。前年比は2024年の92.3%から2025年は94.6%へと改善しており、郵便料金改定という大きな逆風があったなかで、下げ止まりの兆しが見えています。

※出典:電通「2025年 日本の広告費」より株式会社アテナ作成

2つ目は、広告市場全体におけるDMの位置づけです。DM広告費2,708億円は、雑誌広告費(1,135億円)やラジオ広告費(1,153億円)の2倍以上の規模であり、新聞広告費(3,136億円)に迫る水準です。

DMは今もなお、日本の広告市場における主要メディアの一つであり続けています。

「DM広告費」の数字を正しく読むための注意点

DM広告費の実態を正しく把握するには、この数字が何を集計しているかを理解しておく必要があります。

「日本の広告費」におけるDM広告費(2,708億円)は、郵便・配達料<発送費>のみが対象で、企画・デザイン・印刷といった<制作費>は含まれていません。
一方、マスコミ四媒体広告費には制作費が含まれているため、単純に比較するとDMの市場規模は実態より小さく見えてしまいます。

そこで、同調査で参考値として公表されている「DM制作関連市場」(2025年:1,121億円)と合わせて見ると、DM関連の市場規模は約3,829億円になります。これは新聞広告費(3,136億円)を上回る水準です。制作費込みで見れば、DMは新聞と並ぶ規模のメディアといえます。
※DM制作関連市場は「日本の広告費」には含まれない参考値です。

さらに注意したいのが、DM広告費が対象としている範囲です。この数字は主に、広告郵便(同一内容で2,000通以上差し出されるDM)の郵便料・配達料をベースに推定されています。そのため、2,000通未満の小ロットDMなどは、市場規模に十分反映されにくいのが実情です。

つまりDM広告費の数字は、実際に流通しているDMのすべてを映したものではなく、市場の実態はこの数字よりも大きいと考えられます。

※出典:電通「2025年 日本の広告費」より株式会社アテナ作成

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減少の中身は「量から質」への構造転換

ここで、2つの数字を並べてみましょう。
DM広告費(発送費)は前年比94.6%と減少した一方、DM制作関連市場は1,121億円(前年比100.2%)と前年並みを維持しました。

<発送費>が減る一方で、<制作費>は横ばい——。この対比は、DM市場で起きている変化の本質を示しています。つまり、送する「量」を絞り、1通あたりにかける「質」を高める方向へ、企業の投資がシフトしているのです。

電通「2025年 日本の広告費」では、DMのトレンドとして次のような変化が報告されています。

  • 単発のキャンペーン型DMから、受け手とのコミュニケーションに配慮した商品同梱型のパーソナライズDMへの移行
  • ターゲットを絞った高付加価値タイプのDMの増加
  • 二次元コードや動画を活用し、オンラインで完結できるデジタルとのハイブリッド運用の進化
  • ウェブ誘導型の低コストDMと、高額商品・BtoB向けのプレミアム型DMへの二極化

かつての「とにかく大量に送る」DMから、「送るべき相手に、響く内容を、最適な形で届ける」DMへ、コスト環境の変化が、結果としてDMの戦略性と費用対効果への意識を高める方向に働いているのです。

この流れは、デジタルマーケティングで培われたデータ活用の手法が、紙のDMに応用されるようになったことも背景にあります。顧客データに基づくセグメント設計やパーソナライズ、二次元コードによる効果測定など、DMは「測れる紙メディア」へと進化しています。

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DMを取り巻く3つの変化|環境・企業・受け手

「量から質」への転換の背景には、DMを取り巻く環境・企業・受け手、それぞれの変化があります。

環境の変化:30年ぶりの郵便料金値上げが「戦略性」を求める

2024年10月、郵便料金は約3割の値上げとなりました。消費税対応を除けば実に30年ぶりの本格改定であり、DMの「コスト」という弱点が一気にクローズアップされた形です。
しかし、この逆風は単なるマイナス要因では終わりませんでした。限られた予算で費用対効果を維持するため、企業はデータ活用によって反応の高いターゲットを厳選し、通数を絞り込む方向へ舵を切っています。
同時に、はがき化やWeb連携による「ライト化」を進める低コスト型と、富裕層・BtoB向けに1通1通の訴求力を高めるプレミアム型への二極化も進行しています。

コスト環境の厳しさが、結果としてDMの企画力・データ活用力を底上げしているのが、環境変化の本質です。

封筒と右肩上がりのお金のイラスト

企業側の変化:デジタル偏重への揺り戻し

デジタル広告費が総広告費の過半数を占めた今、出稿の集中による広告単価の上昇や、獲得効率の頭打ちを実感する企業が増えています。生活者は日々大量のデジタル広告に接触しており、情報過多の環境では一つひとつのメッセージの存在感はどうしても薄まります。

「デジタルがすべてを解決してくれる」という前提に疑問を持ち、あらためてDMを新たなチャネルとして組み込む——そうした予算配分の見直しが、広告主の間で広がりつつあります。

受け手の変化:スマホ世代にDMは「新鮮」に届く

受け取る側の生活者も変わりました。情報収集の中心がスマートフォンに移り、新聞や雑誌といった紙メディアとの接点が減った今、自分の名前で物理的に届くDMは、かえって新鮮な体験として受け止められやすくなっています。

実際、一般社団法人日本メーリングサービス協会の「DMメディア実態調査2025」によると、本人宛DMの閲読率は56.0%と半数以上が目を通しており、一人あたりの週間DM受取通数も前年の4.1通から5.5通へと増加しました。

ここで、先ほど触れたDM広告費の数字を思い出してください。広告費(発送費)が減少傾向にある一方で、生活者が受け取るDMの通数はむしろ増えています。これは、DM広告費の統計に十分反映されない小ロットのDM——ターゲットを絞った個別性の高いDM——が増えているためと考えられます。発送費の数字は減っても、生活者がDMを受け取る実感はむしろ増しているのです。

また、現在の生活者はDMとデジタルを行き来することに慣れています。同調査では、二次元コードなどでWebにアクセスできるDMを受け取った経験がある人は76%にのぼり、DMを読んだ後の行動として最も多かったのは「内容についてインターネットで調べた」でした。紙で興味を持ち、スマホで詳細を確認して行動する——この動線が、すでに当たり前になっているのです。

鍵は「使い分け」と「デジタルミックス」

こうした3つの変化を踏まえると、これからの広告施策は「デジタルかDMか」の二者択一ではありません。広く効率的にリーチできるデジタルと、確実に手元へ届き記憶に残るDM。それぞれの強みに応じて使い分け、二次元コードやLPでつなぎ合わせる「デジタルミックス」の設計こそが、広告費の構造変化に対応する現実的な戦略といえるでしょう。

DMの閲読率や受け取り後の行動データの詳細は、関連コラム「DMの効果とは?最新調査データで見る"読まれる広告"の実力」で解説していますので、あわせてご覧ください。

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まとめ|広告市場の構造変化はDM活用のチャンス

「2025年 日本の広告費」から見えてきたのは、デジタルが過半数を占める広告市場の新しい構図と、そのなかで静かに進むDMの構造転換でした。

DM広告費は2,708億円と減少傾向にあるものの、雑誌・ラジオを大きく上回る規模を保ち、減少幅は縮小しています。そして市場の中身は、環境・企業・受け手の3つの変化を背景に、大量発送型からパーソナライズ・高付加価値・デジタル連携型へと確実にシフトしています。

デジタル広告の単価上昇や反応鈍化に課題を感じているなら、いまの市場環境はむしろDMを試す好機といえます。重要なのは、「量から質」の時代に合わせて、デジタルとの使い分けを設計し、ターゲット選定・クリエイティブ・効果測定までを戦略的に組み立てることです。

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