<自治体向けBPO導入ガイド>
行政事務の業務委託ステップと注意点を徹底解説

物価高騰対策や補助金施策への対応など、社会状況の変化に伴い、自治体の行政事務には柔軟かつ迅速な対応が求められています。スポット的に業務量が急増したり、処理が追い付かなくなったり、と限られた人員だけでは手が回らない・・・そんな課題を抱える自治体も少なくありません。特に給付金や補助金の申請業務などの場合、正確性と迅速さが求められる一方で、突発的に発生することも多く、現場の負担は大きくなりがちです。
こうした背景から、行政事務の効率化を図る手段として「BPO(業務委託)」が注目されています。BPOは単なる外注ではなく、業務の質を維持しながら効率化を実現する戦略的な手法です。

BPOを導入したいけど、委託の進め方が分からない
業務委託をする時の注意点を知りたい
本記事では、このようなお悩みをお持ちの方でBPOの導入を検討している自治体職員の方に向けて、BPO導入の具体的な進め方と、失敗しないための注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜ今、行政事務のBPOが求められているのか?
- 2.行政事務のBPOを成功させる<5つのステップ>
- 2.1.業務の棚卸と委託対象の選定
- 2.2.委託範囲の設定
- 2.3.委託先の選定
- 2.4.要件定義と業務フローの構築
- 2.5.運用と改善
- 3.行政事務の外部委託における注意点
- 4.契約管理の課題と対応策
- 4.1.契約トラブルの例
- 4.2.契約を円滑に進めるためのポイント
- 4.2.1.業務仕様書を詳細に作成する
- 4.2.2.変更管理プロセスを契約に盛り込む
- 4.2.3.定期的にレビューの場を設ける
- 4.2.4.契約書と運用マニュアルを連携
- 5.まとめ
なぜ今、行政事務のBPOが求められているのか?
行政事務のBPOが進んでいる背景には、主に以下の3点のような課題が挙げられます。
これらを解消するBPOの必要性は、単なる業務の削減を目的としたものではなく、業務の質を維持しながら限られた人員でも行政サービスを安定して提供し続けるための有効な手段として、多くの自治体で注目されています。
行政事務のBPOは、業務の安定運用と職員の負担軽減を両立出来る有効な手段です。
行政事務のBPOを成功させる<5つのステップ>
BPOを導入する際には、以下の5つのステップを踏むことで、スムーズかつ効果的な運用が可能になります。

STEP | 01 |
業務の棚卸と委託対象の選定
まずは業務の流れを整理し、外部委託が可能な業務を明確にします。申請受付・書類審査・データ入力・通知発送など、定型化された業務はBPOに適しています。
もし既存の業務の場合は、処理件数や繁忙期の傾向、職員の工数などを把握しておくと費用対効果の試算にも役立つため有効です。
STEP | 02 |
委託範囲の設定
業務全体を委託するのか、一部のみを委託するのかを決定します。例えば、窓口対応などの住民対応は内部で行い、書類審査やデータ入力など事務作業を外部に委託するなど、業務の性質に応じた切り分けも重要です。
しかし、全体業務の中から一部を切り取って単体で委託するよりも、トータルで依頼することで、全体最適化を図ることが出来るため、より効率的な運用が可能になります。
STEP | 03 |
委託先の選定
他の自治体における類似業務の実績など、行政事務に精通したBPO事業者を選ぶことが重要です。また、個人情報の取り扱いや法令遵守の体制が整っているかも信頼性を判断する上で欠かせないポイントです。過去の運用実績や対応力などを総合的に評価しましょう。
なお、新たに施策を実施する場合は、企画段階から事業者に相談や見積依頼をすることで、必要な業務内容や予算規模を具体的に把握することが可能になります。早期に連携することで、業務設計の精度が高まり、スムーズな立ち上げにつながります
STEP | 04 |
要件定義と業務フローの構築
委託業務の品質を安定させるためには、業務内容のすり合わせと要件定義が重要です。必要な成果物や対応フロー、判断基準の確認など業務立ち上げ時の事前準備が品質確保に繋がります。
知見を持ったBPO事業者であれば、過去の類似案件の実績を活かし、業務内容に応じた最適な業務フローの構築が可能です。さらに、デジタルツールを活用した業務改善や効率化の提案も期待でき、自治体側の負担を最小限に抑えながら、標準化された業務運用体制を整えることが出来ます。
STEP | 05 |
運用と改善
委託業務の運用開始後も、安定した品質を維持するためには、継続的な連携と改善の仕組みを構築することが重要です。現場での課題や住民からの声を拾い、業務フローや対応方法の見直しに繋げることで、より柔軟で効果的な運用が可能になります。
また、業務量の変化や制度改正などに応じて、委託範囲や体制を定期的に見直すことで、過不足のない運用を維持出来ます。単なる外注ではなく、委託先と業務パートナーとしての関係性を築くことが成功の鍵となります。
行政事務の外部委託における注意点
BPOには多くのメリットがありますが、注意すべき点も存在します。以下のリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
POINT | 01 |
情報漏洩リスク
個人情報を扱う業務では、委託先のセキュリティ体制や管理方法を事前に確認しておく必要があります。プライバシーマーク(個人情報保護)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)、QMS(品質マネジメントシステム)などの認証取得状況、アクセス制限、データ保管方法などをチェックし、情報漏洩リスクを最小限に抑えましょう。
特に、マイナンバーや口座情報などを扱う場合は、暗号化やログ管理の有無など、技術的な対策の確認も重要です。万が一のインシデント発生時の対応体制や報告フローも、契約前に明確にしておくことが望まれます。
POINT | 02 |
対応品質の低下
外部スタッフが住民対応を行う場合、対応品質の維持が課題になります。マニュアル整備や研修体制の確認がポイントです。
特に、電話応対や窓口業務など、住民との直接的なコミュニケーションが発生する業務では、言葉遣いや対応スピード、判断基準の統一が求められます。委託先が過去に類似業務を経験しているか、対応履歴の記録・共有体制があるかなども、品質維持の観点から確認しておくと安心です。定期的なフィードバックや品質チェックを行うことで、対応品質を継続的に高めることが可能になります。
契約管理の課題と対応策
行政事務のBPOにおいて、契約管理は見落とされがちなポイントですが、実は業務運営の安定性を左右する重要な要素です。
特に自治体業務は、制度変更や対象者の増減などの変化が多い上に、業務が広く複雑化しやすいため、慎重な設計が求められます。

契約トラブルの例
以下に、自治体業務でよくある契約トラブルとその対策をまとめました。
下記の点に注意して、委託先との認識のズレを無くすことが重要です。
トラブルの種類 | 影響 | 対策・ポイント |
---|---|---|
業務範囲が曖昧 | 認識のズレが発生し、対応の遅れや追加費用の発生に繋がる。 | 委託範囲を事前に細かくすり合わせ、契約書に明記する。 |
成果物・納期の定義が不十分 | 業務の進行に支障をきたし、遅延や品質トラブルの原因に。 | 成果物の内容・納期・品質基準を明文化する。 |
変更対応ルールが不明確 | 都度交渉が必要になり、業務が停滞する。 | 変更時の対応フロー・費用算出方法を契約に明記する。 |
契約書と実務の乖離 | 現場で対応できず混乱が生じる。 | 現場ヒアリングを実施し、契約と運用マニュアルを整合させる。 |
<現場でよくあるケース>
- 例:業務範囲が曖昧
委託契約を結ぶ際に業務範囲が明確でないと、「この作業は委託範囲に含まれていると思っていた」「いや、それは自治体側で対応する認識だった」などのすれ違いが起こります。
特に、業務が複数の工程にまたがる場合、どこからどこまでが委託対象なのかを明確にしておかないと、認識のズレが発生しがちです。
- 例:成果物や納期の定義が不十分
「何を、いつまでに、どの品質で納品するか」を明確にする必要があります。例えば、通知発送業務において「発送完了」と「住民への到着完了」のどちらを成果とするかによって、委託先の対応範囲が大きく変わるため、明文化することで双方の認識を一致させることが出来ます。
- 例:変更対応のルールが定まっていない
行政事務では、制度改正や対象者の増加など、業務内容が途中で変更されることも珍しくありません。その度に「費用はどうなる?」「納期は延びるのか?」といった交渉が発生し、現場が混乱することになりかねません。
- 例:契約書と実務の乖離
契約書上では「対応可能」となっていても、実際の現場では「その作業はできない」「設備が足りない」といった問題が発生することがあります。契約前に現場の担当者とヒアリングを行い、実務と契約内容の整合性を取ることが重要です。
契約を円滑に進めるためのポイント
契約管理は、単なるリスク回避の手段ではなく、委託先との長期的なパートナーシップを築くための基盤でもあります。以下のポイントを確認し、柔軟性と透明性のある契約設計を行うことで、業務の安定運用と信頼関係の構築に繋がります。
まとめ
本記事では、行政事務のBPO導入に向けた具体的な進め方と、注意すべきポイントについて詳しく解説しました。業務の棚卸から委託先の選定、契約管理まで、各ステップを丁寧に進めることで、職員の負担軽減と住民サービスの質向上を両立することが可能です。
行政事務のBPOは、単なる外注ではなく、自治体業務を支えるパートナーとの協働です。まずは小さな業務からでも、導入に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
アテナでは、自治体向けに特化した行政事務のBPO委託サービスを提供しています。申請受付、書類審査、データ入力、通知発送などトータルでの対応が可能です。
また、セキュリティ体制や法令遵守の面でも万全の体制を整えており、安心して業務をお任せいただけます。
また、当社では物価高騰対策における、省エネ家電買換え応援キャンペーンやギフトカード配布の運用サポートを行っております。

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