委託先のセキュリティが心配?自治体向けBPOに求められる安心の基準とは

近年、自治体業務の効率化や人手不足への対応策として、BPO(Business Process Outsourcing)の活用が進んでいます。しかし一方で、「外部に業務を委託して本当に大丈夫なのか?」という不安の声も少なくありません。特に個人情報を多く扱う自治体業務においては、委託先のセキュリティ体制が信頼できるかどうかが大きな懸念材料となります。
本コラムでは、BPOを検討・導入する際に気になる「安心の基準」について、一緒に確認していきます。
※BPOとは、専門の外部企業が業務の一部または全部を代行し、業務効率化・コスト最適化・サービス品質向上などを実現する仕組みです。
なぜ「セキュリティ」が自治体BPOの懸念になるのか

自治体業務では、住民の個人情報やマイナンバー、口座情報など、極めて機微な情報を扱う場面が多くあります。これらの情報は、漏洩や誤送付、さらにはサイバー攻撃による不正アクセスなどが発生した場合、住民の信頼を損なうだけでなく、自治体としての責任も問われる重大なリスクを伴います。
BPOの導入により業務の効率化や職員の負担軽減が進んでいる一方で、「外部に情報を預けて本当に大丈夫か?」という不安の声が根強いのも事実です。特に、委託先がどのようなセキュリティ体制を整えているかは、導入判断において避けて通れないポイントとなります。
BPOは単なる作業代行ではなく、業務全体の設計・運用・改善までを担う“パートナー”としての役割が求められます。委託先が自治体業務の特性を理解し、適切なセキュリティ対策を講じているかどうかは、信頼関係の土台となる重要な要素です。
そのため、委託先の選定にあたっては、単にコストや納期だけでなく、「安心して任せられるかどうか」という視点を持つことが、BPO活用の成否を左右すると言えるでしょう。
委託先に求められるセキュリティ対応とは
委託先のセキュリティ体制を評価する際は、以下のような観点で確認することが重要です。
特に、情報管理体制や通信環境、インシデント対応の有無などは、事前にチェックリスト形式で整理しておくことで、確認漏れを防ぎやすくなります。
セキュリティ項目 | 内容 | 確認ポイント |
---|---|---|
①情報管理体制 | ISMS、Pマーク取得、アクセス制限、データ・ログ管理など | 認証取得の有無、運用実態の説明 |
②物理的セキュリティ | 入退室管理、監視カメラ、端末持ち出し制限など | 現場見学や写真での確認 |
③通信環境 | LGWAN接続、閉域網対応、VPN利用など | 自治体の要件に合致しているか |
④インシデント対応 | 初動対応フロー、報告体制、再発防止策など | 過去の対応事例やマニュアルの有無 |
①情報管理体制の整備
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークの取得状況は、委託先が一定の情報管理水準を満たしていることの客観的な証拠となります。
特にマイナンバーや金融情報など、漏洩リスクの高い情報を扱う場合は、暗号化・アクセス制限・操作ログの取得・保管期間の管理など、技術的な対策が講じられているかを確認する必要があります。
また、取得済みの認証が実際の運用に反映されているか(例:マニュアル整備、定期的な教育実施など)も重要なチェックポイントです。
②物理的セキュリティ
情報管理はシステム面だけでなく、物理的な環境の安全性も欠かせません。
たとえば、入退室管理の仕組み(ICカードや生体認証)、監視カメラの設置状況、端末の持ち出し制限など、現場でのセキュリティ対策がどこまで徹底されているかを確認することが重要です。
可能であれば、委託先の運用現場を見学し、実際の運用状況を目で見て確認することも有効です。
③通信環境
自治体業務では、LGWAN(総合行政ネットワーク)や閉域ネットワークなど、外部インターネットと完全に分離された通信環境が求められるケースがあります。
委託先がこうした環境に対応できるかどうかは、業務の可否に直結するため、事前に技術的な要件を明確に伝え、対応実績や構成例を確認することが大切です。
また、セキュリティポリシーに基づいたデータの送受信方法(例:VPN、ファイル転送手順)も確認しておきましょう。
④インシデント対応
万が一、情報漏洩や誤送付などのトラブルが発生した場合、初動対応の速さと正確さが被害の拡大を防ぐ鍵となります。そのため、委託先がどのような報告フローを持っているか、誰が対応責任者となるのか、再発防止策の策定・報告書の提出などの体制が整っているかを事前に確認しておくことが重要です。
過去のインシデント対応事例があれば、対応の透明性や改善の姿勢も評価材料になります。
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業務設計力と対応範囲の広さ
単なる作業代行ではなく、業務全体を設計・管理できる体制があるかどうかは、委託後の運用品質に直結します。例えば、業務フローの見直しや、住民対応の手順改善など、自治体の課題に合わせた柔軟な設計力があるかを確認しましょう。
住民対応の品質と改善提案力
住民からの問い合わせ対応や、申請書類の不備対応など、現場で発生する課題に対してどれだけ能動的に対応できるかも重要です。クレーム対応の実績や、改善提案の事例がある委託先は、単なる作業者ではなく、業務改善のパートナーとして期待できます。
実績とサポート体制
類似業務の運用経験が豊富で、自治体特有の事情(繁忙期、制度変更、住民対応の傾向など)に精通しているかどうかも、安心材料のひとつです。
また、専任担当者の配置や、問い合わせ対応の体制など、サポート面の充実度も確認しておきましょう。
セキュリティ対策だけでなく、こうした運用面の力も含めて委託先を評価することで、より安心して業務を任せることができます。自治体業務の特性を理解し、柔軟に対応できる委託先こそが、長期的なパートナーとして信頼できる存在となるでしょう。
自治体側でできること:契約前のチェックリスト
BPOを導入する際、委託先の選定や契約内容の確認は非常に重要です。特にセキュリティに関する不安を払拭するためには、自治体側が事前に「何を確認し、どこまで明文化するか」を明確にしておく必要があります。以下は、契約前に押さえておきたい主なポイントです。

委託範囲と責任分担を明確にする
業務のどこまでを委託し、どこからが自治体の責任範囲なのかを曖昧にしたまま契約を進めると、トラブルの原因になります。例えば「住民からの問い合わせ対応は誰が行うのか」「不備が発生した場合の再処理はどちらが担うのか」など、業務フローごとに役割分担を明文化しておくことが重要です。
セキュリティ要件を業務仕様書に明記
「セキュリティに配慮すること」といった抽象的な表現ではなく、具体的な要件(例:ISMS取得、LGWAN対応、アクセスログの保管期間など)を仕様書に記載することで、委託先との認識齟齬を防げます。
また、仕様書に明記することで、契約後の運用監査や改善提案の基準にもなります。
定期的なレビューや現場ヒアリングの実施
契約時に確認した内容が、実際の運用現場で守られているかどうかを定期的にチェックすることも大切です。レビュー会議や、現場担当者へのヒアリング、必要に応じた現地視察などを通じて、継続的な信頼関係を築くことができます。
トラブル時の報告・対応フローの事前確認
万が一、情報漏洩やサイバー攻撃による不正アクセスなどのトラブルが発生した場合、どのタイミングで、誰に、どのように報告されるのかを事前に取り決めておくことが重要です。また、再発防止策の策定や、報告書提出の有無なども含めて、対応フローを明文化しておくと安心です。
まとめ:信頼できる委託先と、安心できる連携を
BPOは、自治体業務の効率化やサービス品質向上に大きく貢献する手段です。しかしその効果を最大限に引き出すには、「安心して任せられる委託先」を選ぶことが前提となります。
セキュリティ体制の確認はもちろん、業務設計力や住民対応力、実績などを総合的に評価し、自治体と委託先が“パートナー”として連携できる関係性を築くことが、BPO成功の鍵となるでしょう。
アテナでは、自治体様の課題に寄り添い、最適なBPOソリューションをご提案しています。

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