行政事務のBPOはここがポイント!<自治体向け委託先選定ガイド>

近年、自治体を取り巻く社会的環境は大きく変化しています。自治体が担う住民サービスは多様化・複雑化し、デジタル化・DXも急務となっています。2020年前後からは新型コロナウイルス流行を契機に、突発的な給付金事業や物価高騰対策の運用などが進められ、政策や制度変更などの社会状況の変化に伴い、自治体の事務局業務は年々複雑化しています。
こうした状況の中で注目されているのが、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。BPOとは、専門の外部企業が業務の一部または全部を代行し、業務効率化・コスト最適化・サービス品質向上などを実現する仕組みです。
※関連コラム:<自治体向けBPO導入ガイド>行政事務の業務委託ステップと注意点を徹底解説
しかし、「どんな委託先を選べばいいのか」と悩む自治体も少なくありません。

限られた人員で事務局業務を回すのが大変
委託先選定のポイントが知りたい
本記事では、事務局業務を外注する際に押さえておきたい4つの重要なポイントについて、具体的な事例やチェック項目を交えながら詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.急速に拡大する自治体業務のBPOニーズ
- 1.1.なぜBPOが選ばれるのか?
- 1.2.BPOのメリット
- 2.委託先選定のための4つのチェックポイント
- 2.1.業務設計力と対応範囲
- 2.2.住民対応と品質管理
- 2.3.セキュリティ体制とリスク管理
- 2.4.実績とサポート体制
- 3.自治体BPO導入成功事例
- 4.まとめ
急速に拡大する自治体業務のBPOニーズ
BPOの活用は、これまで公共分野ではコールセンター業務やシステム運用が主流でしたが、近年では事業全体の設計から申請受付、審査、不備対応、問い合わせ対応、広報物制作まで多岐に渡り、「事務局機能一式」を外部委託するケースが急増しています。
なぜBPOが選ばれるのか?
自治体がBPOを導入する最大の目的は、【業務負担の軽減】と【専門的なノウハウの活用】です。
突発的な大型事業や専門知見が必要な業務では、短期間で大人数の臨時職員を確保し、育成することは困難です。さらに、複雑な個人情報管理、様々な住民対応など、細かなオペレーションと高いセキュリティ水準が求められるため、専門事業者のサポートが大きな武器となります。
特に、給付金や補助金などの住民向け事業では、円滑な遂行・迅速な支給・個人情報管理の厳格さ、事後のトラブル防止までを一貫して担うパートナー選びは、今後の自治体経営においてますます重要性を増しています。
BPOのメリット
BPOの導入によって、期待出来るメリットは以下の通りです。
効果 | 対応 | 期待出来るメリット |
---|---|---|
業務負荷の平準化 | 繁閑差のある業務にも柔軟に対応できる体制を構築。 | 特定時期に集中する業務も安定運用が可能に。 |
業務品質の向上 | 過去実績やナレッジを活かした専門的な対応。 | 丁寧な住民対応と効率的な業務運営を実現。 |
情報セキュリティの強化 | 高度な物理・システム環境で個人情報を厳重に管理。 | 情報漏洩リスクの低減。 |
住民満足度と職員負担の両立 | 対応品質を維持しつつ、職員の心理的・物理的負担を軽減。 | クレーム減少、職員の働きやすさ向上にも貢献。 |
ワンストップサービス体制 | 申請受付からコールセンター・広報物制作まで一括対応。 | 管理の一元化により、進捗把握や調整がスムーズに。 |
一方で、アウトソーシング範囲や責任分担が不明確な場合、品質や住民満足度のコントロールが難しくなるケースもあり、BPOは「任せ方」と「選び方」がとても重要です。
※BPO導入の進め方や注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
委託先選定のための4つのチェックポイント
自治体の事務局業務は、対応範囲が非常に広く、複雑です。こうした業務を効率的に運用するには、単なる作業代行として一部の業務を切り出して委託するのではなく、業務全体を設計・管理出来る委託先の選定が不可欠です。
以下では、委託先選定において特に重視すべきポイントをチェックリストとともに詳しく解説します。
POINT | 01 |
業務設計力と対応範囲
- 解説
- なぜ「一貫対応」が重要なのか?
自治体業務は施策や制度ごとに要件や対象者が異なり、作業ボリュームや業務特性も多岐にわたるため、単なる作業代行では十分に対応しきれません。
そのため、委託先が「現状分析→業務フロー設計→運用→効果測定→改善提案」まで、業務プロセス全体を一貫して担うことが出来るかどうかがBPO成功の鍵となります。これは業務の安定性と効率性に直結する重要なポイントです。
- なぜ「トータルサポート」が求められるのか?
自治体業務では、印刷・封入・発送・データ入力・コールセンターなど、複数の機能が連携する場面が多くあります。これらを個別に委託するのではなく、ワンストップで対応出来る委託先を選ぶことで、業務の一元管理が可能となり、自治体側の管理負担を大幅に軽減出来ます。特に、給付金制度の運用では、対象者への通知発送、申請受付、問い合わせ対応、審査、支給処理などが一連の流れとして存在します。これらには住民の個人情報の取り扱いが伴うため、一括して対応出来る体制を整えることで、複数社に大切な住民情報を分散させることなく、安全に運用することが可能です。
POINT | 02 |
住民対応と品質管理
- 解説
- なぜ「住民対応の品質」が重要なのか?
住民との直接的なやり取りが発生する業務では、対応品質が非常に重要です。電話応対や窓口対応において、丁寧で分かりやすい説明が出来るか、クレーム対応の経験があるかなど、委託先の対応力を見極める必要があります。住民満足度は自治体の評価にも直結するため、委託先の教育体制やマニュアル整備状況、対応履歴の管理方法なども確認しておきましょう。
- なぜ「業務改善の提案力」が求められるのか?
例えば、申請受付業務では、受付方法の設計、書類の不備対応、審査基準の整理、通知文の作成など、細かな工程が多数存在します。これらの工程において、委託先が不備削減や入力ミスの防止といった潜在的な課題やリスクを抽出し、審査方法の効率化や処理スピード向上など、業務改善を重ねながら体制を最適化出来るかどうかが重要です。
単に業務を「こなす」のではなく、現場の課題を見つけ出し、改善に繋げる視点を持った委託先であれば、自治体職員の負担を軽減しながら、業務品質の向上にも大きく貢献してくれるでしょう。
POINT | 03 |
セキュリティ体制とリスク管理
自治体業務では、住民の個人情報やマイナンバー、口座情報など、機微な情報を扱うため、委託先の情報管理体制が整っているかどうかは最重要項目です。
委託先を比較・検討する際は以下のポイントを確認しましょう。

- 解説
- なぜ「情報管理体制の整備」が重要なのか?
プライバシーマーク(個人情報保護)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)、QMS(品質マネジメントシステム)などの認証取得は一定の基準を満たした体制があることの証明です。加えて、入退室管理・監視カメラ・業務端末の持ち出し制限・アクセスログの記録など現場での運用実態も確認しましょう。
また、情報リテラシー研修や定期的なセキュリティテストなど、社員教育の取り組みがあるかも重要な評価ポイントです。
- なぜ「安全なネットワーク環境」が必要なのか?
行政機関の要請で特に重視されるのが「LGWAN(総合行政ネットワーク)」「閉域ネットワーク」「VPN専用回線」など、外部インターネットと完全に隔離された通信環境の有無です。
特にLGWANは、自治体間や行政機関同士が安全かつ迅速にデータをやり取りするための全国統一のセキュアネットワークであり、自治体BPO業務においては、LGWAN環境に接続できるか、またそのネットワーク上で安全にサービスを提供できる体制があるかどうかが重要な要素となっています。
外部との通信リスクを最小限に抑えるため、LGWAN対応のシステムやサービスを利用できるかどうかや、業務専用端末の導入・ファイアウォールの設定・アクセス権限の厳格な管理など、技術的な対策が十分に講じられているかを確認することが大切です。外部との通信を最小限に抑え、自治体ごとのセキュリティポリシーや要件に適合した環境で業務を行うことで、情報漏洩など様々なリスクを管理することが出来ます。
- なぜ「トラブル時の体制」が重要なのか?
万が一、情報漏洩や誤送付などのセキュリティインシデントが発生した場合の体制も重要です。初動対応、影響範囲の特定、原因分析、再発防止策の提示、自治体への報告フローなど、具体的なマニュアルや連絡体制が整備されているかを確認しましょう。具体的には以下の対応を迅速に実施する必要があります。
・速やかな報告
・影響範囲特定・原因分析
・再発防止までの体制
・関連当局/自治体への報告フロー
緊急連絡網の整備や、24時間対応の体制、第三者機関との連携など、リスク管理の仕組みがある委託先であれば、安心して業務を任せることが出来ます。
信頼性の高いセキュリティ環境と制度理解を兼ね備えた委託先選びが、自治体業務の安定した運用に繋がります。
POINT | 04 |
実績とサポート体制
- 解説
- なぜ「類似業務の実績」が重要なのか?
過去に類似の自治体業務を受託した経験がある委託先であれば、自治体業務の特性や流れを理解しており、業務設計や運用の精度が高く、トラブルの発生リスクも抑えることが出来ます。給付金、補助金、家計支援など、制度ごとの対応経験が豊富かどうかを確認しましょう。経験に基づいた対応力が業務の安定性に直結します。
- なぜ「企画段階からの相談」が必要なのか?
施策の企画段階から委託先に相談出来る体制があるかどうかも重要です。早期に業務設計やスケジュール調整、見積もりを進めることで、準備期間の短縮や業務精度の向上が期待出来ます。また、自治体側の予算やスケジュールに合わせた柔軟な提案が出来る委託先であれば、施策の実現可能性も高まります。
- なぜ「運用中のサポート体制」が重要なのか?
運用中のサポート体制も重要なポイントです。専任担当者の配置、定期的な進捗報告、住民の声を踏まえた改善提案、トラブル時の迅速な対応など、運用中の支援体制が整っているかを確認しましょう。
さらに、自治体職員向けの研修資料や操作マニュアルの提供など、現場支援の充実度も評価ポイントになります。委託先が伴走型の支援を提供してくれることで、自治体職員は安心して業務を任せることができ、住民サービスの質向上にも繋がります。
実績のある委託先であれば、自治体業務の流れや課題を理解したうえで、伴走型の支援を提供してくれるため、安心して業務を任せることが出来ます。
自治体BPO導入成功事例
事例 | 01 |
東京都千代田区
「暮らし応援ギフトカード事業」
2025年7月に、東京都千代田区で実施された「千代田区暮らし応援ギフトカード事業」では、データの受領から発送伝票の印刷、ギフトカードの封入・封緘、対象住民への一斉発送、さらに住民の皆様からのお問い合わせ対応まで、当社にて一貫して対応を実施。BPOの活用により、万全なセキュリティ体制の中で迅速な立ち上げと運用を実現しました。
※当社対応実績※
事例 | 02 |
神奈川県A市
「省エネ家電買換え応援事業」

エアコンや冷蔵庫等の省エネ家電の購入を支援する補助金制度において、コールセンターの設置、申請受付、データ入力から審査業務までの一貫対応に加え、事業の公式LP(ランディングページ)制作やポスター・チラシなど広報ツールのデザイン・印刷もまとめてサポート。行政業務とプロモーションをワンストップで受託することで、申請者の利便性と情報発信力の両立を実現し、自治体職員の負担軽減および事業全体のスムーズな運営に大きく寄与しました。
事例 | 03 |
千葉県B市
「子ども応援事業」

コロナ禍における子どもたちの学びを支援するため、3歳~18歳の全児童・生徒に図書カードを配布する「子ども応援事業」を実施。図書カード(金券)発送業務に加え、チラシやポスターなどの広報物の制作、問い合わせ対応、未着状況の確認、WEBフォームによるアンケート回収までトータルで支援することで、自治体職員の業務負担を軽減しながら、住民対応の品質と事業運営の効率化を両立しました。
まとめ
自治体の事務局業務をアウトソーシングする際は、単なる作業代行ではなく、業務全体を設計・管理出来るパートナーの選定が重要です。
業務設計力、対応範囲の広さ、住民対応の品質、セキュリティ体制、そして実績とサポート体制の充実度など、複数の観点から委託先を見極めることで、職員の負担を軽減しながら、業務の質と効率を両立することが可能になります。信頼出来る委託先との連携が、自治体業務の安定運用と住民満足度の向上につながります。
アテナでは、自治体向けに特化した行政事務のBPO委託サービスを提供しています。申請受付、書類審査、データ入力、通知発送など、トータルでの対応が可能です。
また、セキュリティ体制や法令遵守の面でも万全の体制を整えており、安心して業務をお任せいただけます。

「類似業務の知見がほしい」
「施策実施にあたっての予算感が知りたい」
「迅速に業務を立ち上げたい」
「デジタルツールを活用して運用を効率的に行いたい」
などの課題がございましたら是非お気軽にご相談ください。
- 関連ソリューション
※当社対応実績※