業務が回らない…そんな自治体職員の悩みを解決する「BPO」という選択肢

近年、全国の自治体では「業務が回らない」「人手が足りない」といった声が増加しています。少子高齢化による職員数の減少、複雑化する行政サービス、市民ニーズの多様化など、自治体を取り巻く環境はますます厳しくなっています。しかし、省庁を含む行政サービスは多くの人の生活を直接支える、無くてはならない存在です。
このような状況の中で、現場では限られた人員で膨大な業務をこなさなければならず、自治体職員の業務負担は大きくなる一方・・・そこで、注目されているのが「BPO(Business Process Outsourcing)」という選択肢です。
BPOとは、専門の外部事業者に業務を委託し、業務効率化・コスト最適化・サービス品質向上などを実現する手法です。
※関連コラム:企業成長の鍵!BPOとアウトソーシングの違いと活用法

人手不足で業務を回すことで手一杯
コストを抑えながらサービスの質も向上させたい
本記事では、自治体職員のお悩みと、それを解決する「BPO」活用の可能性について、実例やポイントを交えながら詳しく解説します。
自治体が抱える5つの課題と現状
自治体職員の方々が直面している業務上の課題は、単なる「忙しい」では片付けられないほど深刻です。その背景には、人手不足や業務の複雑化、予算制約、住民対応の高度化、そしてデジタル化(DX推進)の遅れなど、構造的な要因がいくつも絡み合っています。
以下、主要な5つの課題について1つずつ掘り下げて解説していきます。

課題 | 01 |
人手不足の慢性化
まず、最も根深い問題が「人手不足」です。少子高齢化が急速に進む日本では、若年層の人口そのものが減少しており、自治体職員として働く20代・30代の人材確保がますます困難になっています。かつては団塊世代の大量退職が人員減少の一因とされていましたが、現在ではそれ以上に、新規採用の難しさと若手人材の定着率の低さが深刻な問題となっています。
特に地方自治体では、都市部への人口流出や民間企業との人材獲得競争の激化により、優秀な若手職員の確保が難しくなっています。その結果、限られた職員が複数の業務を掛け持ちする「多忙化」が常態化し、業務の質や住民サービスへの影響も懸念されています。さらに、デジタル化や行政改革の推進により、職員には従来以上に高度なスキルや柔軟な対応力が求められるようになっており、人材の量だけでなく質の確保も課題となっています。
- 自治体間に広がる人材確保の格差
人手不足の問題は、すべての自治体に共通する課題である一方で、その深刻度には大きな地域差があります。特に、都市部と地方部では、職員の採用・定着において顕著な格差が生じています。都市部の自治体では、交通の利便性や給与水準、キャリアパスの明確さなどが若手人材にとって魅力となり、比較的安定した採用が可能です。

課題 | 02 |
業務の多様化と複雑化
自治体職員の業務は、近年ますます多様化・複雑化しています。かつては窓口業務や住民票の発行や税務処理など、定型的な業務が中心でしたが、現在ではそれに加えて、地域福祉、防災、環境対策、デジタル化推進、補助金・助成金の対応など、対応すべき分野が急増しています。
【対応例】
- 補助金・助成金の受付
(例:子育て世帯への臨時給付金、コロナ対策の持続化給付金など) - イベントの企画運営
(例:地域振興、観光誘客、子育てフェアなど) - 災害対応
(例:避難所運営、防災訓練、情報発信など) - 地域活性化やまちづくりプロジェクト
- SNS・Web広報
- 住民対応

特に、社会課題が複雑に絡み合う現代では、ひとつの業務が複数の部署にまたがるケースも多く、職員には横断的な知識や調整力が求められるようになっています。さらに、国や都道府県からの制度変更や新規事業への対応も頻繁に発生し、現場では「常に新しいことに追われる」状況が続いています。
課題 | 03 |
コスト削減のプレッシャー
自治体の財政状況が年々厳しくなる中、効率的な行政運営が求められています。
以下のように財政を圧迫する要因は多岐にわたり、自治体は限られた予算の中で、住民サービスの質を維持しながら、コスト削減をしなければならないという難題に直面しています。
- 少子高齢化による税収の減少
- 社会保障費の増加
- 公共施設の老朽化/インフラ維持コスト
- 地域経済の低迷/産業衰退
- 災害対応費用
- 交付税制度の見直しや減額

また、予算が限られていることで、必要な人員や設備の確保が困難となり、現場の職員には業務量の増加や負担の偏りが生じています。特に、複雑化する行政課題に対応するためには、専門的な知識や柔軟な対応力が求められますが、それに見合った人材育成や体制整備が追いついていないのが現状です。
自治体は、単なる経費削減ではなく、持続可能な行政運営のために、業務の優先順位付けや、デジタル技術の活用による効率化など、戦略的な判断が求められています。
課題 | 04 |
市民サービスの高度化
近年、自治体に求められる市民サービスはますます高度化・多様化しています。住民のニーズとして「早く・正確に・丁寧に」対応することが当たり前とされ、特にSNSや口コミサイトの普及により、一つの対応が自治体全体の評価に直結する時代となりました。そのため、職員にはより高い対応力と意識が要求されています。
また、「個人情報の保護」や「ハラスメント対策」といった、コンプライアンスの順守も求められ、多くが専門性や属人的な知識を要するため、対応には時間と労力がかかります。
さらに、住民のライフスタイルや価値観の多様化により、画一的なサービスでは対応しきれないケースも増加しています。例えば、子育て支援や高齢者福祉、外国人住民への対応など、個別性の高い相談や支援が求められる場面が増えており、これにより、窓口業務や電話対応だけでなく、専門的な知識や柔軟な判断力を要する業務が日常的に発生しています。しかし、現場の職員は業務に追われ、十分な対応ができないケースも少なくありません。結果として、対応の遅れやミスが発生し、住民からの信頼を損なうリスクも高まっています。
課題 | 05 |
デジタル化(DX推進)の遅れ
国が掲げる「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進方針により、行政のデジタル化は急務とされています。しかし、現場レベルでは住民票の発行や申請手続きなど、日常的な業務の多くが未だにアナログで行われており、依然として紙ベースの業務や手作業による処理が根強く残っているのが実情です。
その背景には、システム導入の遅れや予算不足、既存業務との整合性の難しさなど、技術面・組織面の課題が複雑に絡んでいます。さらに、職員のITスキルには大きなばらつきがあり、新しいツールやシステムに対する抵抗感や不安も少なくありません。
また、自治体ごとのリソース格差も大きく、都市部では専門部署や外部人材の活用が進んでいる一方で、地方ではIT人材の確保すら困難な状況です。このような人材ギャップは、業務の効率化だけでなく、住民サービスの質にも影響を及ぼしています。
「BPO」という選択肢がもたらす価値

こうした課題に対してBPOを導入することで、以下のようなメリットが得られます。
メリット | 01 |
職員の負担軽減
業務の一部を委託することで、限られた職員数でも円滑に業務を進めることが出来、残業の削減や職員の負担軽減に繋がります。また、煩雑で手間のかかる作業から解放されることで、職員は企画立案や政策調整など、より戦略的で創造的な業務に集中出来るようになり、結果として、業務全体の効率が向上します。限られた人員でも高いパフォーマンスを発揮出来る体制が整うことで、働き方改革にも寄与し、特に人手不足が深刻な自治体では、職員の過重労働を防ぐ手段としても有効です。
メリット | 02 |
属人化解消・高品質で安定した業務運用
BPOの活用により、業務が特定の職員に依存する「属人化」を防ぎ、標準化されたプロセスで安定的な運用が可能になります。専門業者による対応は、複雑な業務でもスムーズに処理できる体制を整えており、業務品質とスピードの両立を実現します。
また、ITシステムの運用や福祉支援、外国語対応など、専門性が求められる分野では、自治体内で人材を育成するには時間とコストがかかります。BPOを通じて、即戦力となる外部の専門人材を活用することで、業務の安定性と継続性を確保出来ます。
メリット | 03 |
業務効率化によるコスト最適化
BPOを活用することで、人件費や設備投資を抑えながら、必要な業務だけを効率的に委託することが可能になります。業務の標準化やプロセスの見直しにより、限られた予算の中でも高品質なサービス提供が実現出来ます。さらに、業務量の変動に応じて柔軟に人員を調整出来るため、繁忙期や特定業務への対応力も向上し、無駄のない運営が可能になります。
メリット | 04 |
住民サービスの質向上
専門事業者のノウハウを活用し、コールセンター機能や多言語対応など、住民の多様なニーズに応える体制を整えることで、住民満足度の向上が期待されます。また、業務の標準化により、サービス品質のばらつきが抑えられ、対応のスピードや丁寧さが安定するため、住民からの信頼を得やすくなります。さらに、これにより自治体全体としての住民サービスのレベルが底上げされます。
メリット | 05 |
デジタル化(DX推進)の実現
BPO業者は、RPAやクラウドツールなどのデジタル技術を活用し、紙ベースで行われていた業務をデジタル化します。たとえば、申請書のデータ入力や通知書の自動生成、進捗管理の可視化など、日々の業務に直結する部分から少しずつDXを実現することが可能です。さらに、チャットボットやAIボイスボットの導入により、住民からの問い合わせ対応を自動化・効率化する事例も増えています。
ITスキルやシステム運用に長けた外部人材を活用することで、自治体内のDX推進を加速させることが出来、職員のITリテラシーに依存せずに業務の標準化と品質向上を同時に図れる点も大きな利点です。
「委託したいけど、まだ踏み切れない…」その心理的ハードルとは?
BPOに興味はあるけれど、実際に導入するとなると「本当に任せて大丈夫か?」「庁内で理解を得られるか?」といった不安から、検討が止まってしまうケースもあります。特に自治体では、前例や制度に基づいた運用が重視されるため、新しい取り組みに対して慎重になる傾向があります。
まずは小さな業務から委託を始めることで、職員の負担軽減や業務効率化の効果を実感しやすくなります。例えば、申請書の不備対応や通知発送など、ボリュームがあって時間のかかる業務は外部に任せることで、庁内の理解も得やすくなります。
BPOは単なる“外注”ではありません。
自治体の業務運営において、「安心して任せられるパートナー」として機能する存在です。
- 関連ソリューション
※当社対応実績※